インテリアデコレーションエクセルシアーの基礎知識
27/34

189照明器具は私たちの暮らしに欠かせないものである。しかし、器具の種類とその使いわけについては、一般の人にはあまり知られていない。これは日本人の照明器具に対する関心の低さを物語っているともいえる。第?章でも述べたとおり、日本には多くの独自文化がある。その代表として安土桃山時代に千利休により大成した茶の湯の文化があり、室内のしつらいと茶を供する行為のふたつを同時に行い、総合的にコーディネートすることなどには、日本人の本質的な価値観が反映されているといえる。このように元来日本人は、目に見えるものはもちろん、香りや音など視覚以外の感覚を含めた五感の調和や空気感をトータルに考える感性と気質なのである。照明に関しても、燭台(しょくだい)や灯籠(とうろう)などの明かりをさまざまな形で空間に取り入れてきた。燭台は直接光源が見えるもので、提灯(ちょうちん)や行灯(あんどん)は光源が直接見えない、いわば間接照明である。これらを生活のなかでうまく組み合わせて併用することが、日本独特の趣や風情を生み、一般的となっていた。時代劇などでもその雰囲気を垣間見ることができるだろう。明治時代には、ガス燈の普及により明かりは次第に利便性の高いものへ変化していくが、その過程においても明かりを愛する根底は、その「明るさ」だけでなく「美しさ」にもあったのである。しかし、このような明かりに対する価値観は戦後次第にその方向性を変え、間接的な明かりよりも、光源が少なくより明るいもの、機能性や効率を重視する方向へと変化していったのである。そのため住宅では大抵、照明器具を部屋の天井の中心に1カ所だけ取り付けて隅々まで明るくすることが一般的な形式として定着し、庶民層を中心に普及したのである。今日でもその背景の下、照明計画が行われる傾向にあるが、欧米の照明の美しさに感動し、そのよさを取り入れ併用したいと考える人も増えてきている。ただし、照明器具の種類や取り入れ方のコツなどはまだまだ知られていないことが多い。照明の配置やその効果は、基本的には照度を得ることと、空間に広がり感や開放感などの視覚的な効果を発揮させることにある。インテリアのデコレーションにおいて照明器具は大変重要な位置を占め、その効果により空間のイメージを一新させることさえ可能な重要なツールなのである。ここでは主にアンビエントの照明効果についてまとめる。照明器具の種類照明器具には次のような基本的な形での分類がある。・シャンデリア複数の光源(電球)をもつ吊り下げ式照明器具。豪華だが電球の数が多いことや清掃などのメンテナンスに手間がかかるデメリットがある。・シーリングライト天井にぴったりと取り付ける器具で「直付灯」(じかづけとう)とも呼ぶ。住宅ではもっとも一般的に普及している照明器具である。・ダウンライト天井内に埋め込まれた小型の照明器具のこと。天井に収まりすっきりと見えるのが特徴。丸形、角形などがあり取り付けるには電気工事、木工事、内装工事などが伴う。・スポットライト壁に飾った絵や壁面など、特定のものを集中的に照らす照明器具をいう。単体で取り付けできるものと、レールに取り付けて使用するものとがある。?─5照明器具と演出効果第?章 インテリアデコレーションの技術

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です